令和元年となった昨年11月30日に第10回事業承継学会年次大会が東京で開催されました。これを契機に当学会の代表理事を林廣茂教授から横澤に承継されることになりました。学会創立以前の研究会から参画し、学会機関誌の編集長を 4年間務めてまいりました。
機関誌では、多くの優れた老舗企業やファミリービジネスの事例研究、その海外との比較、日本の経営思想等の論文を掲載し、事業承継のあるべき姿が色々な視点から提示されました。それは「3方よし」に代表されます。
過去何百年も続く成功事例をみると肯定できる反面、その背後に震災、津波、火災、戦争等またお家の事情で消滅した事業も数え切れなくあったろうと推察できます。
さて、中小企業庁によると、経営者の高齢化が進み、数十万社の中小企業が同時期に事業承継のタイミングを迎えようとしており、後継者の育成も考えると、関係者との信頼構築を含め準備には5年~10年ほどかかることから、まず、(1)金融機関、商工会・商工会議所の経営指導員、税理士の方々等が実施している「事業承継診断」を受ける、(2)本ページ下部の診断票を利用してチェックするなどして、事業承継に当たってどのような課題を解決すべきか、把握されることを薦めています。(中小企業庁ホームページより)
当学会も上記の団体等と協力し、研究会を開催する計画です。一般企業の方の参加を歓迎します。学会には学者、弁護士、公認会計士、税理士、事業承継アドバイザー、そして老舗企業、ファミリー企業の経営者が揃っております。
日本の現状をみると、経営者の高齢・健康の問題、先行き不安等で廃業する企業は約60%にも及び、少子高齢化、人口減少、経済問題、格差社会の拡大、テクノロジー、温暖化、自然災害他いろいろな問題に直面しています。これら全てが事業承継に直接・間接に関係しているといえます。
これから家族・企業(家業)・地域社会・国家等は、どのように継承され、どこに向かうのでしょうか!
日本でよく知られるドイツの哲学者、M.ガブリエルによれば、「現在の哲学や科学、テクノロジー経済が人間の自由に影響を及ぼした結果、人間は欲望の奴隷と化した。データやSNSは自由の心臓部を攻撃する。われわれは知らず知らずのうちに行動を操られてしまう」ということです。
承継とは根源的に考えれば<いのち>をつなぐことです。 老舗企業(家業)が実践してきた「拡大より永続の文化」に転換しなければならないのではないでしょうか。この複雑系の世界は常に想定外の出来事が起こり未来は不透明ですが、我々には太古時代から深層に<いのち>の遺伝子「野生の思考」が残っています。老舗企業(家業)や伝統技術、伝統芸能をみれば「野生の思考」が活かされて存続しているようです。
これらの長期・短期の課題を踏まえながら、学会としては永続・承継原理の確立に努力しなければなりません。
当学会では定期的に研究会を開催しております。同志社大学、名古屋商科大学、ハリウッド大学院大学(六本木ヒルズ)他です。詳細はその都度おしらせします。
規模の大中小を問わず全ての企業の今日から明日への事業承継に役立ちたいと願っております。当学会は 関係機関と連携し、事業承継に向けた取組をサポートする様々な支援策の準備を進めています。是非ご利用いただき、円滑な事業承継にご活用ください。
企業経営者の皆様には是非、研究会や学会年次大会へのご参加を歓迎いたします。
代表理事 横澤利昌(ハリウッド大学院大学)
事業承継学会事務局
〒602-0054 京都市上京区今出川通小川西入飛鳥井町268番地